キャリアコンサルタント試験の受験生にとって、逐語録の作成やロールプレイングは重要な対策の一つです。特に、傾聴技法を活用した適切な伝え返しや共感の技術は、相談者との信頼関係を築くために欠かせません。この記事では、逐語録事例シリーズ第4回として、役職定年を迎えモチベーションが低下している相談者との面談例を紹介しつつ、実際に使える合いの手や傾聴技法について解説します。試験対策の実践として、ぜひご活用ください。
56歳男性、役職定年でモチベーションが低下しているケース
相談者プロフィール
- 相談者(CL):56歳男性、メーカー勤務、昨年役職定年で部長職から外れ、現在は一般職
- 相談内容:役職定年後、仕事へのモチベーションが上がらない
CC:本日はどのようなお悩みについてお話しいただけますか?
CL:去年、役職定年で部長の職を外れまして。それから、正直あまり仕事にやる気が出なくて悩んでいます。
CC:「役職定年を機に、仕事へのやる気が出なくなった」、この点について、もう少し詳しくお聞きしてもよろしいですか?
CL:はい。今は昔の部下だった人が上司になっていて、自分は一般職として、以前より簡単な仕事を任されることが多いんです。それが何だか、自分の存在価値がなくなったような気がして。
CC:以前の部下が上司になり、ご自身は簡単な業務を任されるようになったことで、「存在価値がなくなった」というお気持ちになっているんですね。
CL:そうなんです。長年頑張ってきたつもりなのに、急に必要とされなくなったような感覚があって。正直、毎日会社に行くのが少し憂鬱です。
CC:長年の頑張りが、今は正当に評価されていないように感じ、それが日々のお気持ちにも影響しているんですね。具体的に、「必要とされなくなった」と感じるのは、どんな場面でしょうか?
CL:会議に呼ばれなくなったり、重要な相談事が自分を通さずに決まっていたりすることが増えました。以前は自分が中心にいた場所から、外側に押し出されたような感じがします。
CC:これまで中心にいた場から、外側に置かれてしまったように感じているんですね。そのお気持ちについて、もう少し聞かせていただけますか?
CL:寂しいというか、悔しいというか…。自分でもうまく言葉にできないんですが、複雑な気持ちです。役職を外れるのは制度なので仕方ないとわかってはいるんですが。
CC:制度として仕方ないと頭では理解しつつも、寂しさや悔しさといった複雑な感情があるんですね。その感情を抱えながら、これまでどのように過ごしてこられましたか?
CL:正直、あまり前向きに捉えられずにいます。与えられた仕事はこなしていますが、以前のように自分から積極的に動く、ということは減りましたね。
CC:気持ちの整理がつかないまま、以前より受け身な姿勢で仕事に向き合っている、ということですね。もし今後、少しでも前向きな気持ちで働けるとしたら、どんな状態がイメージできますか?
CL:そうですね…。若い人たちに、自分の経験を役立ててもらえるような形で関われたら、少しは気持ちが変わるかもしれません。
CC:ご自身の経験を、若い世代のために活かすという関わり方、それは今のお気持ちにとって大切な視点かもしれませんね。実際に、そういった関わりができそうな機会はありますか?
CL:今の部署にも、若手社員が何人かいます。これまであまり自分から声をかけていませんでしたが、考えてみれば、相談に乗ってあげられることもあるかもしれません。
CC:若手社員への関わり方を、ご自身から見直せそうだ、というお考えですね。もし一歩踏み出すとしたら、どんなことから始められそうでしょうか?
CL:まずは、雑談の延長でもいいので、少し声をかけてみることから始めてみようと思います。自分の経験が誰かの役に立つなら、それは悪い気はしませんから。
CC:まずは声をかけることから、無理のない範囲で始めてみようというお気持ちが見えてきましたね。それは、今のお悩みに対する一つの大切な一歩になりそうです。
CL:そうですね。役職がなくなったからといって、何もできなくなったわけではないんだと、少し思えてきました。
CC:今日お話しいただいたことで、ご自身の中で少し新しい視点が生まれたようですね。ぜひ、その一歩を大切にしてみてください。
CL:ありがとうございます。少し気持ちが軽くなりました。
逐語録事例の解説
CC:本日はどのようなお悩みについてお話しいただけますか?
CL:去年、役職定年で部長の職を外れまして。それから、正直あまり仕事にやる気が出なくて悩んでいます。
CC:「役職定年を機に、仕事へのやる気が出なくなった」、この点について、もう少し詳しくお聞きしてもよろしいですか?
解説:冒頭でクライアントの発言を要約して伝え返し、深掘りする許可を得ています。役職定年というデリケートなテーマだからこそ、まず事実を丁寧に確認する姿勢が重要です。
CL:長年頑張ってきたつもりなのに、急に必要とされなくなったような感覚があって。正直、毎日会社に行くのが少し憂鬱です。
CC:長年の頑張りが、今は正当に評価されていないように感じ、それが日々のお気持ちにも影響しているんですね。
解説:クライアントの言葉の背景にある**「評価されていない」という認識**を汲み取り、感情(憂鬱さ)とセットで伝え返しています。事実の確認だけでなく、その事実がクライアントにとってどんな意味を持つかを言語化することが、深い共感につながります。
CL:寂しいというか、悔しいというか…。自分でもうまく言葉にできないんですが、複雑な気持ちです。
CC:制度として仕方ないと頭では理解しつつも、寂しさや悔しさといった複雑な感情があるんですね。
解説:クライアント自身が**「うまく言葉にできない」**と述べている複雑な感情を、CCが丁寧に言語化して返しています。相談者がまだ整理できていない感情を代わりに言葉にすることは、キャリアコンサルタントの重要な役割の一つです。
CC:もし今後、少しでも前向きな気持ちで働けるとしたら、どんな状態がイメージできますか?
解説:現在の落ち込んだ状態から視点を転換し、「前向きな未来」を具体的にイメージしてもらう質問です。問題を掘り下げるだけでなく、解決志向の質問を挟むことで、クライアント自らが前向きな答えを見つけられるよう促しています。
CC:もし一歩踏み出すとしたら、どんなことから始められそうでしょうか?
解説:抽象的な希望(「若手の役に立ちたい」)を、具体的で実行可能な小さな行動に落とし込む質問です。大きな変化を求めるのではなく、「まずは声をかけてみる」という無理のない一歩を相談者自身の言葉で引き出しています。
逐語録のポイント
- デリケートなテーマこそ丁寧な事実確認から始める 役職定年や評価に関する話題は感情が動きやすいため、まず正確に状況を確認する姿勢が信頼関係の土台になります。
- 言葉にできない感情を代わりに言語化する 「うまく言葉にできない」というクライアントの複雑な感情を丁寧に汲み取り、伝え返すことで、内省を深める手助けができます。
- 未来志向の質問で小さな一歩を引き出す 「前向きになれるとしたらどんな状態か」「何から始められそうか」という質問で、無理のない具体的な行動へとつなげています。
傾聴技法の実践で効果的な逐語録の作成
役職定年やシニア層のキャリアの悩みは、今後の日本社会において増えていくテーマであり、キャリアコンサルタント試験でも扱われることの多いシチュエーションです。今回のケースのように、制度上仕方ないと頭では理解していても感情が追いつかないクライアントに対しては、感情を無理に切り替えさせようとせず、複雑な気持ちをそのまま受け止めることから始める姿勢が大切です。この逐語録の事例が、皆さまの試験対策に少しでも役立つことを願っています。

