第29回試験(2025年7月実施)の学科試験について、出題されたテーマごとに背景知識をやさしく整理しました。試験問題の文章・選択肢そのものは、著作権者(特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会・日本キャリア開発協会)に帰属するため、この記事では転載していません。正確な問題文を確認したい方は、下記の公式サイトをご覧ください。
- 問1:大企業の若手・中堅社員のキャリア形成に関する意識調査
- 問2:事業所がキャリアコンサルティングを実施する目的(令和5年度能力開発基本調査)
- 問3:キャリアコンサルタントが対応した相談の内容(労働政策研究・研修機構調査)
- 問4:ホールのプロティアン・キャリアにおける「アダプタビリティ」
- 問5:ハーズバーグの職務満足理論(二要因理論)
- 問6:バンデューラの社会的学習理論における2つの予期機能
- 問7:ホランドの職業興味の6類型(RIASEC)
- 問8:マーシャのアイデンティティ・ステイタス「早期完了(フォークロージャー)」
- 問9:クランボルツのキャリア理論(プランド・ハプンスタンス)
- 問10:カウンセリング理論・心理療法とキーワードの組み合わせ
問1:大企業の若手・中堅社員のキャリア形成に関する意識調査
公益財団法人産業雇用安定センターが2024年に実施したこの調査では、大企業の若手・中堅社員が「今の会社に定年までいたいか」「副業・兼業を経験したいか」「企業間交流型出向で他社を経験したいか」といった項目に、どう回答しているかが示されています。副業・兼業に前向きな姿勢(積極的に経験したい、条件が合えば経験したい)を示す人の割合が、合わせるとかなり高い水準に達しているという点が、この調査の注目すべきポイントです。
問2:事業所がキャリアコンサルティングを実施する目的(令和5年度能力開発基本調査)
厚生労働省のこの調査では、事業所が正社員・正社員以外にキャリアコンサルティングを実施する目的として、「労働者の仕事に対する意識を高め、職場を活性化するため」という回答が、正社員・正社員以外ともに最も多い傾向にあります。「中高年社員の退職後の生活設計支援のため」といった限定的な目的が最多というわけではなく、幅広い年代・雇用形態を対象とした職場活性化の観点が重視されている点がポイントです。
問3:キャリアコンサルタントが対応した相談の内容(労働政策研究・研修機構調査)
独立行政法人労働政策研究・研修機構が2023年に実施したこの調査では、キャリアコンサルタントが直近1年間で受けた相談内容や、対応が難しいと感じた相談内容、活動の場(企業・学校等)による相談内容の違いなどが示されています。活動の場によって、相談される内容の傾向が異なるという点が特徴で、企業を主な活動の場とするキャリアコンサルタントと、学校・教育機関を主な活動の場とするキャリアコンサルタントとでは、寄せられる相談の中心テーマが異なることを押さえておきましょう。
問4:ホールのプロティアン・キャリアにおける「アダプタビリティ」
ホール(Hall, D. T.)のプロティアン・キャリア理論では、アイデンティティとアダプタビリティという2つのメタ・コンピテンシーが重要とされます。アダプタビリティは、適応するための能力(適応コンピテンス)と、適応しようとする意欲(適応モチベーション)の両方から構成される概念であり、「能力面だけが含まれ、動機づけの要素は含まれない」という理解は誤りです。どちらか一方でもゼロになれば、アダプタビリティ全体もゼロに近づくとされる点も特徴的です。
問5:ハーズバーグの職務満足理論(二要因理論)
ハーズバーグ(Herzberg, F.)は、職務満足・不満足を規定する要因を2種類に分けて説明しました。仕事の達成感や承認、成長機会などに関わる**「動機づけ要因」は満足感との関連が強く**、給与や対人関係、労働条件などに関わる「衛生要因」は不満足との関連が強いとされています。この2つの要因の名称と、それぞれがもたらす効果(満足か、不満足の解消か)を正確に区別することが重要です。
問6:バンデューラの社会的学習理論における2つの予期機能
バンデューラ(Bandura, A.)は、人の行動変容に影響を与える予期機能として、ある行動がどのような結果をもたらすかという「結果予期」と、**自分がその行動をどの程度うまく実行できるかという「効力予期」(自己効力感)**の2つを挙げました。自己効力感という概念の土台になっている理論として、あわせて理解しておくとよいでしょう。
問7:ホランドの職業興味の6類型(RIASEC)
ホランド(Holland, J. L.)は、人のパーソナリティと職業環境を6つの類型に分類しました。機械や物を対象とする具体的で実際的な仕事の領域を「現実的職業領域(Realistic)」と呼ぶというのが正しい理解です。6類型の正式名称は「現実的・研究的・芸術的・社会的・企業的・慣習的」であり、「創造的」「農業的」「科学的」といった、正式な6類型に含まれない名称と混同しないよう注意しましょう。
問8:マーシャのアイデンティティ・ステイタス「早期完了(フォークロージャー)」
マーシャ(Marcia, J. E.)が示す「早期完了」の状態は、自分自身の目標と親の目標との間に不協和(ズレ)がなく、これまでのどんな体験も幼児期からの信念を裏付けるだけになっている、柔軟性に乏しい状態を指します。「危機」(悩み迷う経験)を経ないまま、周囲の価値観をそのまま自分の目標として引き受けている点が特徴です。「危機を経て自分なりの結論に達している」状態(アイデンティティ達成)とは明確に区別されます。
問9:クランボルツのキャリア理論(プランド・ハプンスタンス)
クランボルツ(Krumboltz, J. D.)は、キャリアが偶然の出来事に大きく左右されるという前提に立ち、予期しない有益な出来事を自ら生み出していくために、探索的な行動を積極的に取っていくことを提唱しました。単に運任せにするのではなく、好奇心を持って様々な経験に踏み出すことが、結果的に好機を引き寄せるという考え方です。
問10:カウンセリング理論・心理療法とキーワードの組み合わせ
各理論・心理療法には、それぞれ代表的なキーワードがあります。**交流分析における「ゲーム」**は、無意識のうちに繰り返されるパターン化された対人関係のやりとりを指す概念です。似た構成の選択肢として、「今、ここでの気づき」はゲシュタルト療法、「不合理な信念」は論理療法(エリス)に関連するキーワードであり、それぞれ異なる理論と正しく対応させて覚える必要があります。
問1〜10は、企業・労働に関する各種調査データ(問1〜3)と、複数のキャリア理論家の比較(問4〜10)が中心でした。**「調査結果の数値の大小関係を正確に覚えること」「理論家ごとのキーワードを正確なペアで覚えること」**が対策のポイントです。次回は問11〜20の範囲を解説します。
※本記事の解説は、キャリア理論・労働法規に関する一般的な知識をもとに作成したものです。公式の正答表と必ず照らし合わせてご確認ください。
