問1〜20に続き、今回は問21〜問30で扱われたテーマを解説します。試験問題の文章そのものは転載せず、出題されたテーマの背景知識をオリジナルの解説としてまとめています。正確な問題文を確認したい方は、下記の公式サイトをご覧ください。
問21:令和5年版労働経済の分析(賃金の現状と課題)
賃金の伸び悩みの背景には、企業が生み出す付加価値額の動向や、労働市場における企業側の交渉力の強さなど、複数の要因が関係しているとされます。特に労働市場で企業側(需要側)の独占度が高い場合、労働者側の交渉力は弱まり、賃金には下押し圧力がかかりやすいという考え方がポイントです。また、同一企業に長く勤める「生え抜き正社員」の賃金カーブは、近年多くの企業規模で以前より緩やかになる傾向が指摘されています。
問22:三位一体の労働市場改革の指針
「新しい資本主義実現会議」が示したこの指針では、「リ・スキリングによる能力向上支援」「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」「成長分野への労働移動の円滑化」の3つを三位一体で進めるとしています。「一億総活躍社会の実現」はこの三位一体の枠組みそのものには含まれていない点に注意しましょう。
問23:職業能力開発推進者
職業能力開発推進者は、キャリアコンサルタント等、業務を担うのに必要な能力を持つ者から選任されること、そして社内で従業員の職業能力開発を計画的に推進するキーパーソンとしての役割を担うことが基本的な性格です。複数の事業所を持つ企業の場合、企業全体で1名だけを選任すればよいという考え方ではなく、事業所ごとに選任することが望ましいとされています。
問24:労働者災害補償保険法
労災保険は、雇用形態を問わず適用される制度です。昼間学生であってもアルバイト中の事故は労災保険の対象となります。通勤途中に日用品の購入など、ささいな中断・逸脱を行った場合でも、合理的な経路に復帰すれば通勤災害と認められることがあります。労災保険給付を受けたとしても、会社に対する民事上の損害賠償請求が禁じられるわけではありません。また、届出と異なる通勤方法で被災した場合でも、状況によっては通勤災害の対象となり得る点も押さえておきましょう。
問25:男女雇用機会均等法
妊娠中の女性労働者について、主治医から保健指導に基づく措置の指示があった場合、会社にはその措置(職務軽減等)を実施する義務があります。妊娠中および出産後1年以内の解雇は原則として禁止されており、この規定は出産後1年以内に復職した労働者にも適用されます。労働者の募集・採用にあたり、業務上合理的な理由なく身長・体重等を要件とすることは、間接差別として均等法違反に該当し得ます。正社員を一方的にパート社員へ転換するような対応も、妊娠・出産等を理由とした不利益取扱いの禁止に含まれます。
問26:雇用保険制度
雇用保険は、要件を満たす労働者について強制的に適用される制度であり、任意加入ではありません。雇用保険二事業は、雇用安定事業と能力開発事業の2つで構成されています。育児休業給付は雇用保険から支給される一方、出産手当金は健康保険から支給されるものであり、両者は別の制度です。また、日雇労働者も、一定の要件を満たせば「日雇労働被保険者」として雇用保険の適用対象になり得ます。
問27:インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援
学生のキャリア形成支援に係る取組は4つの類型(タイプ1〜4)に整理されており、「インターンシップ」に該当するのはタイプ3・4であり、タイプ2の「キャリア教育」はインターンシップそのものとは区別されます。タイプ3・4の一部では、一定要件のもとで取得した学生情報を広報・採用活動に活用できるとされています。取組全体の位置づけとしては、あくまで企業等の場における学生への教育活動であることが基本です。
問28:高等学校学習指導要領とキャリア教育
高校におけるキャリア教育は、特別活動を要としながら各教科・科目の特質に応じて、学校の教育活動全体を通じて行われるものと位置づけられています。「週1時間のキャリア教育の時間が特別に設定される」という制度は存在しません。独立した専用の授業時間があるわけではなく、様々な教育活動の中に組み込まれていく点がポイントです。
問29:中学校における進路指導・キャリア教育
中学校の進路指導・キャリア教育は、一般的に校務分掌に位置づけられ、進路指導主事や主幹教諭が中心となりながら、教員間で役割が分担されています。「専任教員がすべての学校に配置され、授業を担当せず専念している」という状況は実態と異なります。多くの学校では、教員が他の校務と兼任しながら進路指導・キャリア教育にあたっているのが実情です。なお、生徒の就職に際して、学校長が公共職業安定所の業務の一部を分担できるという制度も存在します。
問30:心理的負荷による精神障害の労災認定基準の改正(2023年)
2023年の改正では、具体的出来事に「顧客や取引先、施設利用者等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)を受けた」ことや、「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」ことが新たに追加されました。「特別な出来事がなければ業務起因性を一切認めない」という限定的な運用に変更されたわけではなく、様々な出来事を総合的に評価して認定する仕組みは維持されています。医学意見の収集方法については、特に困難な事案を除き、専門医1名の意見で判断できるよう効率化が図られました。
問21〜30は、労働市場改革の方向性と、労災保険・男女雇用機会均等法・雇用保険といった労働法規が中心でした。「義務なのか努力義務・推奨なのか」「対象範囲がどこまで及ぶか」を正確に区別することが、この範囲の得点のカギになります。次回は問31〜40の範囲を解説します。
