第27回試験(2024年10月実施)の学科試験について、出題されたテーマごとに背景知識をやさしく整理しました。試験問題の文章・選択肢そのものは、著作権者(特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会・日本キャリア開発協会)に帰属するため、この記事では転載していません。正確な問題文を確認したい方は、下記の公式サイトをご覧ください。
問1:令和5年高年齢者雇用状況等報告
厚生労働省が毎年公表するこの報告書では、企業の定年制の状況や、70歳までの就業確保措置の実施状況などが示されます。65歳以上を定年とする企業の割合や、企業規模別の就業確保措置の実施率、継続雇用制度における「希望者全員を対象とする制度」と「基準に該当する者を対象とする制度」のどちらが多いかといった点は、年によって数値が更新されるため、最新の報告書で確認する習慣が大切です。
問2:第11回21世紀成年者縦断調査
厚生労働省が実施するこの調査は、特定の年代の男女を10年間追跡し、結婚・出産・就業状況の変化を継続的に調べたものです。夫の家事・育児参加の度合いと、その後の第2子以降の出生状況との関連や、独身者の「子ども観」(子どもを持つことへの積極的・消極的なイメージ)の世代間の変化、出産前後の妻の就業継続状況の推移などが出題の中心テーマです。
問3:令和5年度能力開発基本調査(キャリアコンサルティングの効果)
前回(第28回)の解説記事でも触れた調査ですが、今回は「キャリアコンサルティングを行った効果」に焦点が当てられています。正社員・正社員以外それぞれについて、「自己啓発する労働者が増えた」「仕事への意欲が高まった」といった項目の回答割合の順位が問われるパターンが典型的です。
問4:サビカスのキャリア構築理論における「ライフテーマ」
サビカス(Savickas, M. L.)のキャリア構築理論における「ライフテーマ」とは、個人が自分自身の人生について語る、意思や行動に関する自己語り(ナラティブ)そのものを指す概念です。過去のキャリア・トランジション(転機)における気持ちや決断のきっかけが語られる中で、次第に明確になっていくとされています。単なる環境適応力(キャリア・アダプタビリティ)とは区別して理解しておくことが大切です。
問5:スーパーのキャリア発達理論の基本的な考え方
スーパー(Super, D. E.)の理論の根底には、個人は多様な可能性を持ち、さまざまな職業に向かうことができるという考え方があります。特定の職業に一対一で適性が決まるという発想ではなく、幅広い選択肢の中から自己概念を実現していく存在として人を捉えている点が特徴です。
問6:クランボルツのキャリア理論
クランボルツ(Krumboltz, J. D.)は、キャリア形成が偶然の出来事に大きく左右されるという事実に着目し、**偶然の出来事を積極的に活用し、好機として活かしていく力(プランド・ハプンスタンス、計画された偶発性理論)**を提唱したことで知られています。単に運任せにするのではなく、好奇心・持続性・柔軟性・楽観性・リスクテイキングといったスキルを磨くことで、偶然をキャリアに活かせるとする考え方です。
問7:複数の理論家の記述の正誤判断
この問題では、パーソンズ・シャイン・シュロスバーグ・クランボルツといった複数の理論家の考え方が同時に問われています。中でも**シュロスバーグ(Schlossberg, N. K.)の「4Sモデル」**は頻出です。転機(トランジション)への対処を支援する際に、「状況(Situation)」「自己(Self)」「周囲の援助(Support)」「戦略(Strategies)」という4つの視点から現状を整理するという考え方で、名称と内容をセットで覚えておくことが重要です。
問8:スーパーの理論(複数の概念の組み合わせ)
スーパーの理論には多くの重要概念があります。生涯を通じたキャリアの大きな流れを指す「マキシサイクル」(成長・探索・確立・維持・解放などの段階で構成)、人が生涯に果たす複数の役割の重要性を「情意的・行動的・認知的」の3要素で捉える考え方、個人と職業の関係性に着目した「職業的適合性」という概念などが代表的です。なお、成人期を四季にたとえた「ライフサイクル」の考え方は、レビンソン(Levinson, D. J.)の理論であり、スーパーの理論とは別物なので混同しないよう注意しましょう。
問9:ホールのプロティアン・キャリアの特徴
前回(第28回)の解説でも触れたプロティアン・キャリアですが、今回はその対照的な視点が問われています。プロティアン・キャリアでは、「組織で生き残れるかどうか」よりも「自分自身の市場価値」を重視するという考え方が特徴です。組織への依存から脱却し、個人が主体的にキャリアを形成していくという発想を、正しく理解しておく必要があります。
問10:シャインの3つのサイクルの相互作用モデル
シャイン(Schein, E. H.)は、人のキャリアを**「仕事・キャリアサイクル」「家族関係サイクル(新家族の形成)」「生物学的・社会的サイクル(加齢や人生の段階)」という3つのサイクルが相互に影響し合うもの**として捉えるモデルを提唱しました。似たような名前の「アイデンティティ・サイクル」という用語はこのモデルの構成要素には含まれていない点に注意が必要です。
問1〜10は、統計調査系のテーマ(問1〜3)と、複数のキャリア理論家の比較(問4〜10)が中心でした。統計は最新の数値傾向を確認すること、理論家は似た名前・似た概念を持つ理論家同士を混同しないことが対策のポイントです。次回は問11〜20の範囲を解説します。
