第30回試験(2025年11月実施)の学科試験について、出題されたテーマごとに背景知識をやさしく整理しました。試験問題の文章・選択肢そのものは、著作権者(特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会・日本キャリア開発協会)に帰属するため、この記事では転載していません。正確な問題文を確認したい方は、下記の公式サイトをご覧ください。
問1:無業者の状況(令和6年版労働経済の分析)
労働経済白書では、就業を希望していない無業者や、希望はあるが求職活動をしていない無業者の実態が示されます。59歳以下の層では、男女を問わず求職活動を行わない理由として「出産・育児・介護・看護・家事のため」が最も多いとされ、性別や年齢によって理由の傾向が異なる点がポイントです。求職期間の分布についても、特定の期間に偏る「二極化」の可能性が指摘されています。
問2:キャリアコンサルティング・キャリアに関する相談(令和6年度能力開発基本調査)
厚生労働省のこの調査では、キャリアコンサルティングを受けた労働者の割合や、相談したい内容の傾向が示されます。キャリアコンサルタントに相談したい内容は、正社員では「仕事に対する適性・適職」、正社員以外では「将来のキャリアプラン」を挙げる人が最も多いとされ、雇用形態によって相談ニーズの中心が異なる点が特徴です。
問3:キャリアコンサルタントが果たす役割への期待(厚生労働省報告書、2021年)
この報告書では、キャリア観の変化を捉えた相談相手としての機能や、学び直しの動機づけにつながる助言・指導の専門性など、キャリアコンサルタントに期待される役割が示されています。「企業のキャリア開発は当該年度の事業目標達成を優先すべきで、連続的・長期的な視点よりも短期的な視点を重視すべき」という考え方は、この報告書が示す方向性とは異なります。むしろ、労使双方の期待に応えながら、専門性を深化させ続ける自律的な姿勢が求められています。
問4:社会認知的キャリア理論(レント・ブラウン・ハケット)
レント(Lent, R. W.)、ブラウン(Brown, S. D.)、ハケット(Hackett, G.)が提唱した社会認知的キャリア理論(SCCT)は、バンデューラの社会的学習理論をベースに、「自己効力感」「結果予期」「学習経験」「目標」といった概念でキャリア発達を説明する理論です。「自我同一性(アイデンティティ)」は、エリクソンの発達理論に由来する概念であり、社会認知的キャリア理論の構成概念には含まれません。
問5:クランボルツのプランド・ハプンスタンス理論(偶然をキャリアに活かす5つの資質)
クランボルツ(Krumboltz, J. D.)は、偶然の出来事を積極的にキャリアへ取り込むために必要な資質として、「好奇心」「粘り強さ」「柔軟さ」「楽観性」「リスクテイキング」の5つを挙げました。似たような単語(レジリエンス、希望、効力感)を含む選択肢と混同しないよう、正確な5つのキーワードを覚えておくことが対策のポイントです。
問6:ホランドの理論
ホランド(Holland, J. L.)の理論の核心は、個人の職務満足・職業上の安定性・業績は、その人のパーソナリティと働く環境との一致度に左右されるという考え方です。6つの類型は相互に完全に独立しているわけではなく、類似度に応じた配置関係(六角形モデル)で捉えられます。職業選択を無意識的・偶然的なものとする理論(精神分析的アプローチ)とも異なる、個人と環境のマッチングを重視する立場です。
問7:職場における動機づけの理論家
チクセントミハイ(Csikszentmihalyi, M.)は、内発的に動機づけられ、時間を忘れるほどの高い集中力や自己没入感を伴う意識状態を「フロー」という概念で説明しました。マズローの欲求階層説は欠乏欲求だけでなく成長欲求(自己実現欲求)も含む5段階で構成される点、ハーズバーグの衛生要因は満たされても積極性を「高める」のではなくあくまで不満足を防ぐ役割にとどまる点、ショーフェリらが定義した活力・献身・没頭で特徴づけられる概念は「ワーク・エンゲイジメント」であり「ジョブ・クラフティング」とは別の概念である点に、それぞれ注意が必要です。
問8:カウンセリング理論・心理療法の提唱者とキーワード
**フロイト(Freud, S.)の精神分析理論を象徴するキーワードは「リビドー」(性的エネルギー)**です。バーンの交流分析のキーワードは「自己一致」ではなく「ゲーム」や自我状態、エリスの論理療法のキーワードは「ゲシュタルト」ではなく「不合理な信念」、パールズのゲシュタルト療法のキーワードは「無意識」ではなく「今、ここでの気づき」というように、正しい組み合わせを整理しておきましょう。
問9:行動療法とその理論的背景(学習理論)
行動療法は、不適応や問題行動を後天的に学習された結果と捉え、学習し直すことで改善できるという考え方が基礎にあります。「パブロフの犬」に代表されるレスポンデント条件づけや、「スキナーのラット実験」に代表されるオペラント条件づけは、その代表例です。観察学習は、モデルとなる他者の行動とその結果を観察するだけで学習が成立する現象であり、観察者自身が実際にその行動を行って報酬を得る必要はありません。「モデルが報酬を得るのを見る」ことで学習が成立する点(代理強化)が本質です。
問10:ジョブ・カード
ジョブ・カードは、厚生労働省が様式を定める公的なツールで、求職者が職務経歴やスキル・資格を記録し、就職活動時に活用できるほか、将来のキャリアプランについても記載できるようになっています。活用することで、より効果的なキャリアコンサルティングにもつながります。「ハローワークの求職者のみを対象とし、在職者や学生は対象にならない」という理解は誤りで、在職者や学生も含め、幅広い層が活用できるツールです。
問1〜10は、企業・労働に関する各種調査データ(問1〜3)と、複数のキャリア理論家の比較(問4〜9)、そしてジョブ・カード(問10)が中心でした。**「調査結果の数値の傾向を正確に覚えること」「似た理論家・キーワードのペアを混同しないこと」**が対策のポイントです。次回は問11〜20の範囲を解説します。
※本記事の解説は、キャリア理論・労働法規に関する一般的な知識をもとに作成したものです。公式の正答表と必ず照らし合わせてご確認ください。
