近年問題となっている「国保逃れ」は、簡単に言えば
「国民健康保険料が高い人を、一般社団法人の理事(役員)という形に載せ、社会保険へ移す」
仕組みです。
関西テレビの特集報道や政党の調査により、その実態が徐々に明らかになってきました。


国保逃れスキームの全体像
今回問題となった手法は、次の流れで成立します。
- 国保負担が高い人(議員・自営業者など)を集める
- 一般社団法人の「理事」に就任させる(登記)
- 少額の役員報酬を設定
- 社会保険(協会けんぽ)に加入
- 国保から切り替え、保険料を大幅に下げる
👉 形式上は「法人役員+報酬あり」なので社会保険加入が可能になる
関西テレビ報道で明らかになった具体的実態
理事が700人以上いる一般社団法人
関西テレビの取材では、
登記簿上「理事が700人以上」いる一般社団法人の存在が確認されたと報じられました。
通常、一般社団法人の理事は数人〜十数人規模が一般的であり、
数百人規模の理事が存在すること自体が極めて異例です。
理事の「仕事」と報酬の中身
報道によると、理事とされた人たちの業務内容は次のようなものです。
- 〇×形式の簡単な問題への回答
- アンケートへの回答(月1〜2回程度)
- 書類上の理事就任のみで理事会への出席実態なし
報酬の例(関西テレビ報道)
- 会費:月3万4,000円〜5万円(理事 → 法人)
- 報酬:月1万円あまり(法人 → 理事)
- 実際の作業:月2回アンケートに回答
👉 労務実態としては極めて軽微
なぜ保険料が下がるのか|標準報酬月額の仕組み
社会保険料は、「標準報酬月額」を基準に計算されます。
ここがポイント
- 社会保険料は「実際の年収」ではなく
- 法人が設定した役員報酬額に基づく
そのため、
- 年収が数百万円〜1,000万円あっても
- 役員報酬を「月1万円」に設定すれば
- 保険料も極めて低水準になる
👉
「保険料は下げる代わりに、会費は払う」構造
指南書では
「年間で数万〜数十万円の保険料削減が可能」
とメリットが強調されていたと報じられています。
国保逃れの典型的な仕組み
ケース:年収800万円のフリーランスの場合
本来なら
- 国保加入
- 年間保険料:80〜100万円程度(自治体による)
しかし、社会保険に加入し標準報酬月額の1等級であれば1万円から2万円程度の保険料になります。
なぜ「脱法」と言われるのか
この問題が難しいのは、直ちに違法と断定できない点です。
形式上は整っている
- 理事に就任(登記あり)
- 報酬の支払いあり
- 何らかの作業実態(アンケート等)あり
そのため、
- 年金事務所は手続きを受理せざるを得ない
- 「合法」「審査を通過した」と説明される
しかし、実態はどうか
関西テレビの取材では、
- 理事会に出たことがない
- 決まった役割・意思決定への関与がない
- 社会保険加入が主目的と見られる
といった証言も紹介されています。
社労士も
「理事であれば加入自体は違法ではないが、
明らかに理事としての実態がなければ違法・無効になる可能性がある」
と指摘しています。
政党側も「制度趣旨の逸脱」と認める事態に
維新の中間報告に関する関西テレビ報道では、
- 当該議員4人が上記スキームを利用
- 党幹事長が
「結果として応能負担という現行制度の趣旨を逸脱している」
とコメントしたことも伝えられました。
👉
「違法ではないが、正しいとは言えない」
という評価が、当事者側からも示された形です。
なぜ国民全体の問題なのか
国保逃れが広がると、次の影響が出ます。
- 正直に保険料を払う人ほど負担が重くなる
- 保険料負担と給付のバランスが崩れる
- 将来的に保険料率引き上げの要因になる
👉
国保加入者だけでなく、会社員を含む全国民の問題
まとめ|問われているのは「制度の抜け穴」そのもの
今回の国保逃れ問題は、
- 法の抜け穴を突く設計
- 形式と実態の乖離
- 「応能負担」という制度理念の空洞化
を浮き彫りにしました。
現時点では
「違法とは言い切れない」
としても、
「公平である」「許される」
とは別問題です。
今後は、
- 社会保険加入要件の明確化
- 役員実態の厳格確認
- 悪質スキーム排除の制度設計
が本格的に議論される可能性があります。
国保逃れ問題は、一部の議員の話ではなく、
日本の社会保障制度の信頼性そのものを問う問題だといえるでしょう。


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