2025年10月、農林水産大臣に就任した鈴木憲和氏(43)。
かつて農水省の官僚として現場を歩き、政治家に転身してからは一貫して「農政の安定と現場第一主義」を掲げてきました。
自らを「米マニア」と称し、米政策の改革に情熱を燃やす新大臣は、就任会見で「猫の目農政を終わらせたい」と語り、農業の未来を見据えた改革への決意を示しました。
この記事では、鈴木氏の経歴と人物像、そして今後の農政ビジョンをわかりやすく解説します。


「現場が第一」──43歳の新農相・鈴木憲和氏とは
農林水産大臣に就任した鈴木憲和氏(43)は、元農林水産省職員という異色の経歴を持つ政治家です。
1982年生まれ、山形県南陽市を地盤とし、東京大学法学部卒業後に農水省へ入省。2012年に退職して衆議院議員選挙に初当選しました。現在は当選5回を数えます。
農水副大臣や外務政務官、党青年局長などを歴任。農業現場への深い理解と実務感覚を持ち、「米マニア」を自称するほど米政策に強い情熱を注いできました。
農水副大臣時代には、米粉の普及を推進する省内チーム「米粉営業第二課(コメニ)」を立ち上げたほか、「米の需要拡大・創出プロジェクトチーム」座長としても活動。政策と実践の両面から日本のコメ農業を支えてきました。
政策への姿勢──「猫の目農政を終わらせたい」
就任会見で鈴木氏は、農政を取り巻く変化の激しさに言及しました。
20年前、福島県の生産者から言われた言葉が、政治家を志すきっかけになったと語ります。
「日本の農政はコロコロ変わる。生産者は農林水産省と逆のことをやると蔵が建つ。
──この“猫の目農政”を終わらせたい。」
この体験を原点に、「先の見える安定した農政」の実現を誓いました。
令和9年度(2027年度)から始まる新しい水田政策を控え、「需要に応じた生産」を基本とした持続可能な米作りの方向性を打ち出しています。
食料安全保障の確立を使命に
鈴木大臣は、世界人口の増加や気候変動、国際紛争の多発を踏まえ、「食料安全保障の確立」を農水省の最重要使命と位置付けました。
また、「農は国の基なり」という言葉を胸に、全国2万人の農水省職員とともに、現場主義を貫く姿勢を強調しました。
政策面では、次の3つを柱に掲げています。
- ① 食料安全保障の強化:安定供給と自給率の向上を両立
- ② 農業構造改革:スマート農業や輸出産地育成を推進
- ③ 地方創生との連携:中山間地域で「稼げる農業」を実現
テクノロジーで支える次世代農業
激甚化する自然災害や気候変動に対応するため、植物工場や陸上養殖施設などへの投資拡大を打ち出しました。
日本の空調技術を活用した「完全閉鎖型植物工場」は、農業分野だけでなく日本産業全体の競争力向上にもつながると期待されています。
「守るべき分野と攻めるべき分野を明確にした戦略を立て、世界に日本の“食”のマーケットを築く」──これが鈴木氏のビジョンです。
森林・水産分野にも積極姿勢
林業については、「伐って、使って、植えて、育てる」という森林資源の循環利用を推進。
ICTや高性能林業機械の導入支援を通じ、林業経営体の育成を図る方針です。
また、水産分野では海水温上昇による資源変動に対応し、漁船の新技術導入や操業形態の転換を支援。「未来の漁業」を担う若手人材の確保にも力を入れる考えを示しました。
プロフィールと人柄
- 生年月日:1982年(昭和57年)生まれ、山形県南陽市出身
- 家族:妻と息子2人
- 座右の銘:「現場が第一」
- 趣味:おいしいお米探し、畑仕事、テニス、スキー、読書
党内では茂木敏充元幹事長を支援し、旧茂木派に所属。鈴木宗男氏の娘で衆院議員の鈴木貴子氏とも親交が深いとされます。
貴子氏は「彼は理屈で政策を考えるタイプ」と評しています。
まとめ:「稼げる農業」「希望が持てる農村」へ
鈴木憲和農相は、「現場に希望を」「変化に先手を」という言葉を掲げ、安定と改革の両立を目指しています。
その姿勢は、農業を「守る産業」から「成長産業」へと転換する決意の表れといえるでしょう。
「猫の目農政」を終わらせ、生産者が安心して未来を描ける日本農業を築けるか──43歳の若き農相の手腕に注目が集まります。



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