「国保逃れ」は何が問題なのか?一般社団法人スキームの実態と“脱法”と呼ばれる理由

豆知識

近年問題となっている「国保逃れ」は、簡単に言えば
「国民健康保険料が高い人を、一般社団法人の理事(役員)という形に載せ、社会保険へ移す」
仕組みです。

関西テレビの特集報道や政党の調査により、その実態が徐々に明らかになってきました。


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国保逃れスキームの全体像

今回問題となった手法は、次の流れで成立します。

  1. 国保負担が高い人(議員・自営業者など)を集める
  2. 一般社団法人の「理事」に就任させる(登記)
  3. 少額の役員報酬を設定
  4. 社会保険(協会けんぽ)に加入
  5. 国保から切り替え、保険料を大幅に下げる

👉 形式上は「法人役員+報酬あり」なので社会保険加入が可能になる


関西テレビ報道で明らかになった具体的実態

理事が700人以上いる一般社団法人

関西テレビの取材では、
登記簿上「理事が700人以上」いる一般社団法人の存在が確認されたと報じられました。

通常、一般社団法人の理事は数人〜十数人規模が一般的であり、
数百人規模の理事が存在すること自体が極めて異例です。


理事の「仕事」と報酬の中身

報道によると、理事とされた人たちの業務内容は次のようなものです。

  • 〇×形式の簡単な問題への回答
  • アンケートへの回答(月1〜2回程度)
  • 書類上の理事就任のみで理事会への出席実態なし

報酬の例(関西テレビ報道)

  • 会費:月3万4,000円〜5万円(理事 → 法人)
  • 報酬:月1万円あまり(法人 → 理事)
  • 実際の作業:月2回アンケートに回答

👉 労務実態としては極めて軽微


なぜ保険料が下がるのか|標準報酬月額の仕組み

社会保険料は、「標準報酬月額」を基準に計算されます。

ここがポイント

  • 社会保険料は「実際の年収」ではなく
  • 法人が設定した役員報酬額に基づく

そのため、

  • 年収が数百万円〜1,000万円あっても
  • 役員報酬を「月1万円」に設定すれば
  • 保険料も極めて低水準になる

👉
「保険料は下げる代わりに、会費は払う」構造

指南書では
「年間で数万〜数十万円の保険料削減が可能」
とメリットが強調されていたと報じられています。

国保逃れの典型的な仕組み

ケース:年収800万円のフリーランスの場合

本来なら

  • 国保加入
  • 年間保険料:80〜100万円程度(自治体による)

しかし、社会保険に加入し標準報酬月額の1等級であれば1万円から2万円程度の保険料になります。


なぜ「脱法」と言われるのか

この問題が難しいのは、直ちに違法と断定できない点です。

形式上は整っている

  • 理事に就任(登記あり)
  • 報酬の支払いあり
  • 何らかの作業実態(アンケート等)あり

そのため、

  • 年金事務所は手続きを受理せざるを得ない
  • 「合法」「審査を通過した」と説明される

しかし、実態はどうか

関西テレビの取材では、

  • 理事会に出たことがない
  • 決まった役割・意思決定への関与がない
  • 社会保険加入が主目的と見られる

といった証言も紹介されています。

社労士も

「理事であれば加入自体は違法ではないが、
明らかに理事としての実態がなければ違法・無効になる可能性がある」

と指摘しています。


政党側も「制度趣旨の逸脱」と認める事態に

維新の中間報告に関する関西テレビ報道では、

  • 当該議員4人が上記スキームを利用
  • 党幹事長が
    「結果として応能負担という現行制度の趣旨を逸脱している」
    とコメントしたことも伝えられました。

👉
「違法ではないが、正しいとは言えない」
という評価が、当事者側からも示された形です。


なぜ国民全体の問題なのか

国保逃れが広がると、次の影響が出ます。

  • 正直に保険料を払う人ほど負担が重くなる
  • 保険料負担と給付のバランスが崩れる
  • 将来的に保険料率引き上げの要因になる

👉
国保加入者だけでなく、会社員を含む全国民の問題


まとめ|問われているのは「制度の抜け穴」そのもの

今回の国保逃れ問題は、

  • 法の抜け穴を突く設計
  • 形式と実態の乖離
  • 「応能負担」という制度理念の空洞化

を浮き彫りにしました。

現時点では

「違法とは言い切れない」

としても、

「公平である」「許される」

とは別問題です。

今後は、

  • 社会保険加入要件の明確化
  • 役員実態の厳格確認
  • 悪質スキーム排除の制度設計

が本格的に議論される可能性があります。

国保逃れ問題は、一部の議員の話ではなく、
日本の社会保障制度の信頼性そのものを問う問題
だといえるでしょう。

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