ここまで何度か登場した「同意権」「代理権」「取消権」「追認権」。これらはすべて法律行為に関する重要な権利ですが、言葉だけではイメージがつきにくいものです。
この記事では、それぞれの意味や使われ方を具体例を交えてわかりやすく解説します。
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同意権(どういけん)
同意権とは、未成年者、被保佐人や被補助人が判断能力が不十分な方が契約などの法律行為をする際に、法定代理人・保佐人・補助人が「それをしても良い」と許可(同意)を与える権利です。一定の重要な行為について、本人の意思だけでは不十分とされるため、事前に同意を得ることで、法律行為の有効性を補完します。
例:
保佐人が、被保佐人の借金契約に「同意」するケースなど。
→ 同意がないと、その契約は後から取り消される可能性があります。
同意権について、被後見人には認められていないことに注意。被補助人については、家庭裁判所の定めによって変わります。
代理権(だいりけん)
代理権とは、未成年者・被後見人・被保佐人・被補助人に代わって、法定代理人・後見人・保佐人・補助人が法律行為を行える権利です。たとえば施設との契約や預貯金の出し入れ、財産管理などを、本人に代わって行う際にこの代理権が使われます。特に後見類型では包括的な代理権が付与されており、重要な実務権限となります。
例:
成年後見人が、被後見人に代わって施設入所契約を結ぶケース。
→ この場合、契約の効果は本人に帰属します(代理人ではなく本人に効力が及ぶ)。
代理権については、被保佐人・被補助人は家庭裁判所の定めによります。
取消権(とりけしけん)
取消権とは、未成年者・被後見人・被保佐人・被補助人が本来法定代理人・後見人・保佐人・補助人の同意が必要な行為を、同意なしに行ってしまった場合に、その法律行為を後から取り消すことができる権利です。これにより、不利益を被る可能性がある契約などを無効にすることができます。なお、同意を得ていなくても、後から追認すればそのまま有効になります。
例:
被後見人が本人で契約してしまった場合、後見人が「それは不適切だから無効」として取り消すことができます。
取消権については、被補助人は家庭裁判所の定めによります。
追認権(ついにんけん)
追認権とは、未成年者・被後見人・被保佐人・被補助人が行った無効な行為や契約を法定代理人・後見人・保佐人・補助人が取り消すことができる行為について、後からその行為を認める権利のことです。具体的には、民法で規定されている無権代理行為の追認、取り消しうる行為の追認、無効な行為の追認などがあります。追認により、それまで無効であったり取り消すことができた行為が、有効なものとして確定します。
例:
被保佐人が保佐人の同意なしで契約してしまったが、保佐人が後から「いいよ」と追認した場合、その契約は最初から有効になります。
前回の催告権についても必ず覚えるようにしましょう。
「取消し」と「無効」の違いとは?
ここまで「取消し」と「無効」という言葉が何度か出てきていますが、その違いを理解することはとても重要です。一見似ているように思えるこの2つですが、契約の効力がどう扱われるか、誰が主張できるのか、主張できる期間などに明確な違いがあります。以下で詳しく見ていきましょう。
取消しとは?
「取消し」とは、一度有効に成立した契約を後からなかったことにする手続きです。
契約は、最初は有効に成立します。
しかし、後から特定の人が「取消し」をすることで、その契約は初めから無効だったことになります(これを「遡及的無効」と言います)。
つまり、取消されなければ契約は有効のままということです。
取消しに関するポイント
- 取消せる人(取消権者)は決まっている(例:未成年者、成年被後見人など)
- 取消しできる期間に制限がある
追認ができるようになってから5年、かつ、行為(意思表示)時から20年以内 - 取消し可能な契約に対しては、「追認(ついにん)」をすることで契約を有効なものとして認める。
無効とは?
「無効」とは、契約がそもそも法律的に成立していない状態を意味します。
契約が結ばれていても、法的には最初から効力がないのが「無効」です。
したがって、無効な契約には、履行(支払い・商品引渡しなど)義務も発生しません。
無効に関するポイント
- 誰でも無効を主張することができる
- 主張する期間に制限はない
→ 時間がどれだけ経っても、「この契約は無効です」と主張可能です。
まとめ:権利の意味と契約の効力を正しく理解しよう
この記事では、法律行為に関する重要なキーワードである「同意権」「代理権」「取消権」「追認権」、そして「取消し」と「無効」の違いについて解説しました。
それぞれのポイントを簡潔に振り返ると以下のとおりです。
- 同意権:本人の法律行為に対し、あらかじめ「してもよい」と許可する権利
- 代理権:本人の代わりに契約などの法律行為をする権利
- 取消権:一度有効になった契約を、あとから無効にできる権利
- 追認権:本来は無効または取消可能な契約を、有効と認める権利
そして契約自体の効力に関しては、
- 取消し:取り消すと契約の時点までさかのぼって無効になる(ただし、取消権者と期限に制限あり)
- 無効:最初から法的効力がない状態で、誰でもいつでも主張できる
これらを正しく理解することで、契約のトラブル防止や、成年後見制度・宅建試験などでの実務・学習にも大きく役立ちます。
法律は難しいようでいて、仕組みがわかればシンプルです。ぜひ今後も、こうした基本をひとつずつ丁寧に学んでいきましょう。
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