〜インフレ・ドル安・地政学リスク・有限性の視点から〜
金価格は近年、過去最高値を更新しています。
ではなぜ「金」はここまで買われるのでしょうか?
この記事では、金価格が上昇する背景を 経済・金融・地政学・資源の有限性 の観点からわかりやすく解説します。


インフレと通貨価値下落へのヘッジ
金は「現物資産」であり、通貨のように無限に発行できません。
このため インフレが進むと紙幣より金を持つ方が価値を守れる と考えられます。
- 物価が上がる → 通貨の実質価値が下がる
- しかし金は物理的に存在するため価値が目減りしにくい
特にコロナ禍以降、世界中で大規模な金融緩和や財政出動が行われ、通貨の信用が揺らぎました。
その結果「インフレヘッジ」として金が再び注目を集めたのです。
金利・ドルとの関係
金は株式や債券のように利息や配当を生みません。
したがって金投資の魅力は 実質金利の水準 に左右されます。
- 実質金利(名目金利-インフレ率)が低下 → 金の相対的な魅力が増す
- 実質金利が上昇 → 利息のある資産が優位になり、金は売られやすい
さらに金は国際的に「ドル建て」で取引されます。
そのため、ドル安になると世界の投資家にとって金が割安になり、買いが集まる のです。
地政学リスク・金融不安と「有事の金」
戦争や国際紛争、金融危機が起きると、投資資金は「安全資産」である金に逃避します。
- ウクライナ戦争の長期化
- 中東の不安定化
- 米中対立の激化
- 世界的な金融不安(銀行破綻など)
これらはすべて「有事の金」としての需要を押し上げています。
歴史的にも、湾岸戦争・リーマンショック・コロナショックなど 危機のたびに金は買われてきた のです。
中央銀行による金の買い増し
金価格を支える大きな要因が 各国中央銀行の積極的な買い増し です。
- ロシア:中国のように外貨準備の一部をドルから金へシフト
- 新興国:米ドル依存を避けるため、金の保有比率を増加
国が買うということは、需給をタイトにし、長期的な価格上昇要因になります。
特に米ドルへの信頼が揺らぐ場面では、中央銀行が「基軸通貨リスク回避」のため金を買う流れが強まります。
投資商品の拡大と個人投資家の参入
かつて金投資といえば、金地金や金貨など現物が中心でした。
しかし今では、
- 金ETF(例:GLD)
- 純金投資信託
- 積立型投資(少額からコツコツ)
- 先物取引(レバレッジを効かせた取引)
など、誰でも簡単に金に投資できる環境が整っています。
資産分散ニーズが高まる中、個人投資家や機関投資家の参入が金価格を押し上げています。
金の有限性という根本的要因
金の価値を支える最も重要な特徴は 「有限性」 にあります。
- 地球上の金埋蔵量には限りがある
- 年間の採掘量はおよそ3,000トン程度と安定している
- 技術革新があっても「供給量の大幅増加」は期待しにくい
つまり、需要が増えても供給が一気に増えることはありません。
希少性があるため、長期的に価値が維持されやすい というのが金の強みなのです。
まとめ:安定した資産のリスクヘッジとして有効なもの
金価格が上昇する理由は単純ではありません。
インフレ・ドル安・地政学リスク・中央銀行の買い増し・投資拡大 など複数の要因が絡み合っています。
さらに「有限性」という金そのものの特性が、価値を裏付けています。
つまり金は、
- 有事に強い安全資産
- 資産分散の手段
- 長期的に価値が維持されやすい資産
として、これからも世界中で注目され続けるでしょう。
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