宅建試験において最初の壁となるのが「民法」です。理由は、専門的な法律用語が多く、意味が分からないまま進めてしまうこと。このページでは、民法の基本的な枠組みと頻出する法律用語を、かみくだいた説明で丁寧に整理します。
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この記事は、そのテキストと併用することで理解が一気に深まります。独学でもつまずかず、最短で合格を狙うには「参考書+実践解説」の組み合わせが効果的です。

民法の4大原則とは?
民法は「私たちの日常生活のルールブック」です。契約、財産、権利関係などを定めています。
その民法全体の前提となっているのが、次の4つの基本原則です。
原則名 | 内容の要点 | 守ろうとする価値 | キーワード |
---|---|---|---|
権利能力平等の原則 | すべての人が平等に権利・義務の主体となれる。出生によって私権が発生。 | 自主独立、平等 | 「私権の享有は出生に始まる」 |
所有権絶対の原則 | 所有者はモノを自由に使い、処分できる。国家や他人の干渉を受けない。 | 財産の自由、経済活動の基盤 | 使用・収益・処分の自由 |
私的自治の原則 | 自由意思によって権利義務を決定。契約などの法律関係を国家が干渉しない。 | 自由な取引、自立した個人 | 契約自由、国家不干渉 |
過失責任の原則 | 故意または過失があるときだけ損害賠償責任を負う。過失がなければ責任なし。 | 行動の自由、安全な法的環境 | 故意・過失・損害賠償 |
① 権利能力平等の原則
すべての人は、生まれた瞬間から法律上の権利・義務を持つことができる。
- 職業、性別、年齢に関係なく、平等に法のもとで扱われる。
- 「私権の享有は出生に始まる(民法1条3項)」と明記されています。
- 例:赤ちゃんでも財産を相続する権利がある。
📌 ポイント:「平等」は結果ではなく、権利のスタートラインが同じという意味です。
② 所有権絶対の原則
自分の物は、自分の自由で使っていい。
- 他人や国に口出しされずに、自分の財産をどう使うかを決められる。
- 使用(使う)・収益(貸す・売る)・処分(譲る・捨てる)が自由。
📌 ただし現在では制限されることもあります(例:建築基準法や騒音規制など)。
③ 私的自治の原則
自分の意思で契約や法律関係を決めることができる。
- 他人に強制されず、自由に契約を結ぶ or 結ばない選択ができる。
- 「契約自由の原則」とも呼ばれる。
📌 国家が日常の取引に口を出さない=「民と民」の自由を尊重する考えです。
④ 過失責任の原則
注意を怠って他人に損害を与えたときにだけ責任が生じる。
- わざと(故意)や、不注意(過失)があってはじめて損害賠償の責任が生まれる。
- 過失がなければ、たとえ結果的に損害が出ても、責任はない。
📌 故意 or 過失がないのに責任を負うのは不公平。だからこの原則がある。
民法でよく出る基本用語とその意味
善意・悪意
用語 | 法律の意味 | 日常との違い |
---|---|---|
善意 | 事実を知らないこと | 日常では「良い人」 |
悪意 | 事実を知っていること | 日常では「悪い人」 |
例:
Aさんが、あなたの住所を知らない → Aは善意
Bさんが、それを知っている → Bは悪意
✅ ポイント:「知らない=善意」「知っている=悪意」。悪いかどうかの評価ではない。
過失(かしつ)
意味:注意を怠ること。
つまり「やるべき注意をしなかった」という落ち度のこと。
種類 | 意味 | イメージ |
---|---|---|
重過失 | 非常に不注意 | 赤信号を無視して横断 |
軽過失 | ちょっとした不注意 | 書類の見落とし |
無過失 | 注意を尽くしていた | 十分確認したが見落とした |
よく出る組み合わせ表現
用語 | 解説 |
---|---|
善意無過失 | 事実を知らない+注意も怠っていない(完璧) |
善意有過失 | 事実を知らないが、注意が足りなかった(落ち度あり) |
善意無重過失 | 重大な落ち度はないが、少し注意が足りなかった |
✅ 宅建試験では「善意無過失かどうか」で、権利保護の有無が問われることが多いです。
対抗する
意味:「自分の権利を主張すること」
例:
「AはBに対して所有権を対抗できる」
→ Aは「それは自分の物だ!」とBに主張できるという意味。
✅ 相手に対して法律上の主張を通せるかどうかを表す言葉です。
まとめ
用語 | 試験での頻出ポイント |
---|---|
善意・悪意 | =「知らない」「知っている」。感情的な意味はなし |
過失 | 責任の有無を分けるカギ。重過失か軽過失かに注意 |
対抗 | 権利を相手に主張できるかどうか(登記などがカギ) |
民法の4原則 | すべての条文に共通する考え方の「土台」 |
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