宅建業者や宅地建物取引士(宅建士)が宅建業法に違反した場合、違反の内容や程度に応じて「監督処分」や「罰則」が科されます。このページでは、それぞれの処分の種類、対象、処分権者、典型的な違反事例、手続きについてわかりやすく整理しています。
監督処分とは?
● 宅建業者に対する監督処分
- 指示処分:改善指導のようなもので、違反を是正するよう命じる(軽い処分)
- 業務停止処分:最長1年間の業務停止命令(違反が重い場合)
- 免許取消処分:営業免許の取消(最も重い処分)
● 宅建士に対する監督処分
- 指示処分:業務改善の命令(比較的軽い)
- 事務禁止処分:宅建士としての仕事が最長1年間できなくなる
- 登録消除処分:宅建士としての登録を抹消(資格喪失)
業者に対する処分の詳細
■ 指示処分
- 内容:違反行為の是正を命じる。
- 処分権者:免許を出した国土交通大臣または都道府県知事、違反地の知事
- 例:帳簿の不備や宅建士の監督不行き届きなど
- 注意点:この処分に違反すると業務停止処分に進むこともある。
■ 業務停止処分
- 内容:宅建業の全部または一部を停止させる(最大1年間)
- 例:
- 誇大広告
- 重要事項説明書の不交付
- 手付金保全措置の不履行
- 宅建士の設置違反など
- 罰則との関係:違反すれば刑罰(懲役・罰金)も科される場合がある
■ 免許取消処分
- 内容:宅建業の免許を取り消す(営業不可)
- 例:
- 無免許営業
- 不正手段で免許を取得した
- 破産者で復権を得ていないなどの欠格要件に該当
宅建士に対する処分の詳細
■ 指示処分
- 内容:業務改善の命令
- 例:名義貸しを認めた、宅建士の業務で不正行為
■ 事務禁止処分
- 内容:宅建士の職務ができなくなる(最長1年)
- 注意:宅建士証は返納義務あり、満了後は返還請求で戻る
■ 登録消除処分
- 内容:宅建士の登録を抹消(事実上の失格)
- 例:
- 欠格事由に該当
- 登録を不正に取得
- 指示や事務禁止処分への違反
監督処分の手続き
- 業務停止処分や免許取消処分の際には、「聴聞」が行われる
- 聴聞とは:違反者に対して弁明や証拠提出の機会を与える手続き
- 処分内容によっては「公告(公表)」も行われる
- 公告は宅建業者への処分のみ
- 宅建士への処分には公告不要
罰則(刑事罰・行政罰)
● 主な罰則内容
違反内容 | 罰則内容 |
---|---|
無免許営業、不正な免許取得、業務停止違反等 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(または併科) |
重要な事実の不告知 | 2年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
高額報酬の要求 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
誇大広告、履行遅延、手付貸与 | 6か月以下の懲役または100万円以下の罰金 |
帳簿・名簿の不備、標識掲示義務違反 | 50万円以下の罰金 |
宅建士証提示義務違反 | 10万円以下の過料(行政罰) |
両罰規定とは?
従業者(宅建士等)が違反して罰金刑を受けた場合、法人である宅建業者も罰金刑の対象になる制度です。特に悪質な違反の場合、法人には最大「1億円の罰金」が科されることもあります。
試験対策ポイント
- 「監督処分」と「罰則」は宅建業者と宅建士で別物
- 宅建士証の提示違反などは宅建士が対象、重要事項説明の不交付は宅建業者が処分対象
- 免許取消処分は免許権者だけが行える(都道府県知事または国土交通大臣)
- 聴聞を行わない例外:業者の所在が不明な場合
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