1. 宅建士になるまでの流れ
宅建試験に合格しただけでは、実はまだ「宅地建物取引士」と名乗ることはできません。
以下の4ステップを経て、はじめて「宅建士」として業務に従事できます。
✅ 宅建士になるまでの4ステップ
ステップ | 内容 |
---|---|
① 試験合格 | 年1回の国家試験に合格(合格率15%前後) |
② 登録申請 | 住所地の都道府県で「資格登録簿」への登録申請を行う |
③ 登録完了 | 登録が完了すると「宅地建物取引士資格者」となる |
④ 取引士証の交付申請 | 取引士として業務に就くには「取引士証」が必要(顔写真付き) |
2. 宅建士にしかできない業務(業務独占)
宅建士は、法律上独占的に認められた重要な業務があります。
✅ 宅地建物取引士の「3つの独占業務」
- 重要事項の説明(35条書面)
…契約前に買主・借主へ重要な情報を口頭で説明すること。 - 重要事項説明書への記名押印
…説明書への氏名記載+押印は宅建士のみ可能。 - 契約書(37条書面)への記名押印
…契約後に交付される書類にも宅建士の記名押印が必要。
💡 この3つの業務は、宅建士でなければ絶対にできない「業務独占」行為です!
3. 資格登録簿とは?
宅建士試験に合格した後、「資格登録簿」への登録を行います。
- 管理は住所地の都道府県
- 登録には、実務経験2年以上または国土交通大臣の登録実務講習の修了が必要
- 登録後、晴れて「宅地建物取引士資格者」となります
📌 資格登録簿に記載される情報は、氏名・生年月日・住所・合格年など。
4. 取引士証とは?
宅建士として実際に働くには、「取引士証」が必要です。
- 有効期間は 5年
- 顔写真付きのプラスチックカードで交付される
- 交付申請は「勤務先が決まり、業務に従事する段階」で行うのが一般的
✏️ 取引士証がなければ、たとえ資格者でも「重要事項説明」などの業務はできません。
5.宅建業者の「免許欠格事由」と宅建士の「登録欠格事由」の違い一覧表
項目 | 宅建業者(免許の欠格事由) | 宅建士(登録の欠格事由) |
---|---|---|
対象 | 宅地建物取引業を営む者(法人・個人) | 宅地建物取引士(個人資格) |
根拠法令 | 宅建業法第5条 | 宅建業法第18条 |
判断権限 | 国土交通大臣または都道府県知事 | 都道府県知事 |
暴力団員である者 | ×(欠格) | ×(欠格) |
成年被後見人・被保佐人 | ×(欠格) | ×(欠格) |
禁錮以上の刑に処された者 | ×(刑の終了から5年間は欠格) | ×(刑の終了から5年間は欠格) |
破産手続中(復権なし) | ×(欠格) | ×(欠格) |
不正・不誠実な業務を行った者 | ×(過去5年以内) | △(限定的に該当する) |
欠格事由に該当する役員がいる場合 | ×(法人の場合、その役員に1人でも該当者がいれば不可) | ―(個人資格のため該当なし) |
暴力的関与・名義貸し等がある場合 | × | △(名義貸し等を理由に取引士登録取消しあり) |
廃業や死亡等の届出義務 | ○(免許返納または廃業届) | ○(死亡届・欠格届出) |
上記のいずれかに該当すると、都道府県知事によって登録は抹消されます。
取引士証を持っている場合は、速やかに返納義務あり
✅ ポイント解説
宅建業者(免許の欠格)
- 法人・個人の両方が対象であり、法人では役員全員の適格性が問われる。
- 社会的信用にかかわる事由(暴力団、禁錮刑、破産など)に加え、過去の行政処分歴や不正な業務経験も判断材料。
- 欠格に該当すれば、免許が交付されない or 更新できない。
宅建士(登録の欠格)
- 個人資格に対する審査であり、業者としての過去ではなく、人格的・法的な資格保持の可否が重視される。
- 登録後でも、該当すれば登録抹消・取引士証返納となる。
- 業者の免許とは異なり、法人の役員構成は無関係。
🎯 試験対策アドバイス
- 「免許=業者(法人含む)」「登録=取引士(個人)」と覚える。
- 法人の役員の欠格が影響するのは「免許」だけ。
- 暴力団・破産・禁錮刑などは共通の欠格事由として重要。
- 出題では「宅建業者は◯で宅建士は×」といったひっかけが多いため、対比表で覚えるのが効果的です。
6.宅建士の更新 vs 宅建業の免許更新 ― 違い一覧表
項目 | 宅建士(取引士証の更新) | 宅建業者(免許の更新) |
---|---|---|
更新対象 | 取引士証(資格証明書) | 宅建業免許(事業を行う許可) |
根拠法令 | 宅建業法 第22条 | 宅建業法 第6条 |
有効期間 | 5年 | 5年 |
更新時期 | 有効期限の満了前に申請 | 有効期限満了の 90日前から30日前まで に申請 |
更新に必要なこと | 指定の「法定講習」の受講が必要 | 欠格事由の再審査、事務所の状況などの確認 |
提出先 | 取引士証の交付を受けた 都道府県知事 | 免許権者(知事または国土交通大臣) |
更新しないとどうなるか | 取引士証が失効(資格そのものは消えない) | 宅建業の営業ができなくなる(無免許営業になり違法) |
特徴 | あくまで「証明書」の更新。登録自体は継続される | 営業を続けるために必ず必要。失効すると営業停止になる。 |
✅ ポイント解説
宅建士(取引士証の更新)
- 宅建試験に合格し、登録後に発行される「取引士証」の更新です。
- 更新には5年ごとに「法定講習(6時間程度)」の受講が必須。
- 更新しなくても登録は残るため、再交付の手続きで再取得は可能。
- 試験では「資格が消えるわけではない」と問われることも。
宅建業者(免許の更新)
- 宅建業を営むための「免許」の更新。法人も個人も対象。
- 有効期間は同じく5年だが、期限内に更新申請しないと営業できなくなる。
- 更新手続きは、業者の所在地が1都道府県内なら知事免許、それ以上なら大臣免許。
- 「欠格事由の確認」や「事務所の状況チェック」がある。
🎯 試験対策ワンポイント
- 「取引士証の更新は講習」「免許の更新は営業継続に必須」と覚える。
- 「更新しなくても登録が消えない」のは宅建士だけ。
- 宅建業者は「更新忘れ=無免許営業」で重い違反になる。
コメント