キャリアコンサルタント試験の受験生にとって、逐語録の作成やロールプレイングは重要な対策の一つです。特に、傾聴技法を活用した適切な伝え返しや共感の技術は、相談者との信頼関係を築くために欠かせません。この記事では、キャリアコンサルタント試験の逐語録例を紹介しつつ、実際に使える合いの手や傾聴技法について解説します。試験対策の実践として、ぜひご活用ください。
27歳女性、独身、営業職(勤務5年目)のケース
相談者プロフィール
- CL(クライアント):27歳女性、独身、営業職(勤務5年目)
- 相談内容:現職にやりがいを感じられず、キャリアチェンジを考えている
CC:本日はどのようなご相談でしょうか?
CL:今の仕事にやりがいを感じられなくなってきていて、転職を考えているんです。
CC:「やりがいを感じられない」とのことですが、何かきっかけのようなものがあったのでしょうか?
CL:最初の頃は目標もあったんですけど、最近は毎日同じような仕事の繰り返しで、達成感もなくて…。なんとなく、このままでいいのかなって。
CC:同じような業務が続いて、達成感も感じにくくなっているのですね。ご自身の将来に対して不安を感じられているご様子が伝わってきます。
CL:はい…。同僚はバリバリ働いているのに、自分だけ焦ってしまっていて。営業職が向いていないのかもしれないって思うようになりました。
CC:「向いていないかもしれない」というお気持ちの背景には、焦りや違和感のような感情があるようのでしょうか。そのあたり、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
CL:営業って、やっぱり数字が全てじゃないですか。私は人の話を聞いたり、じっくり関わる仕事のほうが向いてるんじゃないかって思い始めたんです。
CC:人とじっくり関わる仕事の方が自分には合っているかもしれない、という思いがあるのですね。そう感じるようになったのは、なにかきっかけがあったのでしょうか?
CL:社内で新人の教育係をやったときに、すごくやりがいを感じたんです。教えることが楽しかったというか…。
CC:新人指導の中でやりがいを感じられた経験があったのですね。
CL:はい、そのときに「自分ってこういうのが好きなんだな」って初めて思いました。
CC:その気づきはとてもすばらしいですね。
CL:ただ、転職って簡単じゃないし…。周りにも「もったいない」って言われることもあって。
CC:周囲の反応も気になっていて、迷いがある状態なのですね。ご自身では、今後どうしていきたいとお考えでしょうか?
CL:本当は、教育や人材系の仕事に興味があります。でも、未経験だし、うまくいくか不安で…。
CC:教育や人材系の仕事に興味があるのですね。しかし、未経験という点に不安を感じていらっしゃるのですね。
CL:そうですね、興味はあるんですけど、自信がないというか…。
CC:「やってみたい」という気持ちがある一方で、「自信がない」というお気持ちもあるのですね。その不安の背景にあるものは、どんなことでしょうか?
CL:失敗したらどうしようって思います。今の仕事は慣れてるから、ある程度はできるけど、新しいことは怖いです。
CC:「慣れている安心」と「新しい挑戦の不安」の間で揺れているように感じます。とても自然な感情だと思いますよ。
CL:そう言ってもらえると、ちょっと安心します。
CC:一緒に今後の選択肢を整理していきましょうか。
CL:はい、お願いします。何から考えたらいいかも分からなくて…。
CC:まずは「やりたいこと」「できそうなこと」「大切にしたいこと」などを一緒に棚卸ししてみませんか?
CL:それならできそうな気がします。
CC:ご自身の価値観や強みを言葉にしていくと、今後の道筋が見えやすくなりますよ。例えば、教育係をしていて楽しかったとき、どんなことをしていましたか?
(※この後も、強みの言語化や価値観の深掘りを続けていきます)
解説:試験対策としてのポイント
感情の確認・言語化
CC:同じような業務が続いて、達成感も感じにくくなっているのですね。ご自身の将来に対して不安を感じられているご様子が伝わってきます。
→クライアントが言葉にしていない感情(不安・疑問)を読み取り、言語化して伝え返すことで、自己理解を促し、安心感を与える効果があります。こうした感情への共感と明確な伝え返しが重要です。
自己理解の促進(過去の成功体験への焦点)
CC:新人指導の中でやりがいを感じられた経験があったのですね。
→クライアントが感じた「やりがい」に焦点を当てることで、自分らしい働き方や職業観の軸を見つける手助けになります。相談者の「リソース(資源)」を引き出す支援ができているかが大切です。
希望と不安のバランスに寄り添う
CC:「やってみたい」という気持ちがある一方で、「自信がない」というお気持ちもあるのですね。
→クライアントの中にある「希望」と「不安」の両方を取り上げ、偏らずに扱うことで、相談者が自分の気持ちを整理しやすくなります。これはキャリアコンサルティングの「意思決定支援」にもつながる重要な視点です。
伴走的な姿勢の表明と選択肢の整理
CC:ご自身の価値観や強みを言葉にしていくと、今後の道筋が見えやすくなりますよ。
→クライアントの意思を尊重しながら、「一緒に考える」「整理していく」姿勢を見せることで、安心感と信頼関係を保ったまま次のステップへと導きます。
まとめとアクションへのつなぎ
CC:まずは「やりたいこと」「できそうなこと」「大切にしたいこと」などを一緒に棚卸ししてみませんか?
→「何から始めればいいかわからない」と語る相談者に対して、具体的かつ実行可能な行動のきっかけを提示しています。
📝 総括:試験合格に向けた逐語録活用法
この逐語録では、以下のような試験合格のための重要観点を押さえています:
評価観点 | 本事例での該当要素 |
---|---|
ラポール形成 | オープンクエスチョン、共感的な応答 |
傾聴技法 | 感情の反映、要約、オウム返し |
自己理解の促進 | 成功体験の深掘り、強み・価値観の確認 |
問題の明確化 | 不安・迷いの言語化と可視化 |
選択肢の提示 | キャリアチェンジへの可能性の探索 |
行動への支援 | 棚卸し・内省の促し、自己決定支援 |
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